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2015-08-23

【アニメ】忘れた森のヒナタ

今日は、NHK教育で久しぶりに『おじゃる丸』を見ました。
今年は戦後70年ということで、今回のおじゃる丸は戦争特集だったんです。

29分という短い時間で、しかも子供向けの作品ですから表現に限りがあると思います。しかし、よくもまあ、あれだけの濃い内容を作り上げたなあと思いました。このアニメに関わった人たちの本気を感じました。

今は戦争を実際に体験した世代の人が少なくなっています。そんな中で戦争をどのように伝えていくか、大きな課題になってきました。現在の若い世代の中には、日本が敗戦した事実さえ知らない人もいるらしいです。

櫻井翔が「終戦の日」を知らない若者に「衝撃的な解答もあった」と驚く
Livedoor News 2015年8月5日 21時35分


戦後70年記念番組での街頭インタービューの結果がひどかったという話です。もちろん、こういういろんな意味でかわいそうな子供たちは例外的なんでしょうが、それでも少しずつ戦争は忘れられているようです。

子供たちに戦争を伝えていくにはTV番組などの映像メディアは訴求力が高いと思います。しかし、これまで民放で作られてきたドラマは舐めてんのかっていうレベルだったし、映画にしてもお涙頂戴的なものが多くていまいちでした。正直なところ、戦争体験者がいなくなった後は戦争を伝えていくのは無理だろうと思っていました。

しかし、『火垂るの墓』などもそうですが、アニメ作品には伝える力が残っているんじゃないか。今回の『おじゃる丸』を見て、自分はそう確信しました。もちろんファンタジー作品なので「情報の正確さ」というところでは実写ドキュメンタリーにかなわないところはあると思います。ですが、アニメには人に(特に若い世代に)訴えかけるものがあります。もっと自分から情報にアクセスしたいと思わせる力があると思うんです。

参考映像:
Hinata_ojyarusp_20150823
ヒナタ(CV:矢島晶子さん
Hinata (CV: YAJIMA, Akiko)
『おじゃる丸スペシャル わすれた森のヒナタ』 2015年 NHK教育
"Prince Mackaroo Special: Hinata of the Forgotten Forest"
(反斗小王子特別篇 被忘記的森林之日向), 2015, ETV
(23 Aug. 2015)
*This quotation is grounded on the article 32 of the Copyright Law of Japan.

おじゃる丸たちの前に現れたヒナタは、アメリカ軍の空爆で家族を失い、自身も亡くなっていた少女。戦争の記憶を忘れて森の中にいました。

同じように戦争を忘れて森の中にいた鳥、亀、火薬にはそれぞれ夢がありました。

鳥の夢は大空高く飛ぶことでした。空の上から街を眺めるのが好きだった。しかし、戦争が始まると彼は爆撃機になりました。視聴者の小さい子供たちにはわかるはずもありませんが、胸に描かれた"B"の文字は"Bomber"(爆撃機)の"B"。おそらく彼の名前はスーパーフォートレス。アメリカ軍戦略爆撃機で、B-29 と呼ばれていました。日米戦争末期には日本中の都市に無差別絨毯爆撃を行い、1945年3月10日には一晩で10万人の命を奪いました。

亀の夢は豪華客船になって、たくさんの人を乗せて海を行くことでした。彼は、潜水艦になりました。日米戦争も終わりの頃になると、日本は制海権を失い、海外の戦場に兵隊を送ることも、物資を送ることもできなくなりました。輸送船の多くは潜水艦に撃沈され、兵士は戦うことなく死んでいきました。潜水艦の標的は軍の輸送船だけではなく、一般市民を載せた船にまで及びました。1944年8月22日には沖縄から子供たちを疎開(避難)させるために航行していた対馬丸が撃沈されて、多くの子供が海で亡くなりました。

火薬の夢は綺麗な花火になって、たくさんの人を楽しませることでした。彼は爆弾になって、多くの街を焼きました。日米戦争では16万トンの爆弾が投下され、30万人の市民が命を失いました。原子爆弾は、二つの都市を一瞬で灰にしました。

鳥や亀や火薬は、戦争で運命を翻弄された人たちの暗喩として用いられているのでしょう。南方のジャングルで餓死した人も、シベリアで凍死した人も、特攻でアメリカの戦艦に突っ込んだ若者たちにも、死んだ人たちにはそれぞれ夢があったはずです。ひとたび戦争が起これば、聖戦だろうが侵略だろうが、たとえそれがどんなものであっても、必ず人間の運命を大きく変えてしまう。この作品は、そういう戦争の本質を鋭く突いていると思います。

そして、もう一つ忘れてはいけないことは、海外でも日本の市民と同じように苦しんだ人たちが大勢いたという事実。日本も無差別爆撃をやったし、捕虜を生体実験に使ったりしました。原爆は作れなかったけれども、化学兵器や生物兵器を作りました。他人の運命を変えてしまったということについては、日本も加害者だったということはよく認識しておく必要があります。戦争に関わった人間は、等しく閻魔大王に叱られなければなりません。

自分は、戦争を知らない世代ですが運命を変えられた一人です。70年前に日本が平和であったなら、自分はこの世界に生まれてこなかった。ひとつの家族が戦争で運命を変えられた結果、自分は生まれてきました。直接戦争体験はなくても、戦争のことは考えざるを得ない宿命を負っています。

話は変わりますが、来年(2016年)秋に公開予定の劇場版アニメで『この世界の片隅に』という作品があります。クラウドファンディングで3600万円を集めることに成功した作品で、自分もささやかながら支援しています。戦争に敗れた日本に生まれ落ちた意味を考えるとき、こういう活動にはなんらかの形で参加する義務があると思っているから。

先日、『この世界』のファンミーティングでパイロット版を見ましたが、かなりのクオリティでした。原爆で消えてしまった街の姿も映像で見事に再現されていました。やはり、アニメーション作品には戦争を伝えていく力があると思います。完成が楽しみです。

余談:
ちょっと前に、『この世界の片隅に』の主人公(すず)の声は竹達彩奈さんがいいなあなんて書いたことがありました(お誕生日記事参照)。しかし、今回のおじゃる丸を見て、少し考えが変わりました。

『この世界』は日常系アニメに近い雰囲気といっても、やはり戦時中が舞台になっている作品です。後半はすずも空襲で辛い目に遭います。故郷の広島は原子爆弾で廃墟になる。そういう作品だから、演技者にも相当な精神的負担が予想されます。

一般人の自分たちすらアニメで戦争の話を見せられたら鬱になるのに、表現者の彼女たちにかかる負担はどれほどのものか・・・・・・。あやなちゃんだってプロのはしくれだからきちんと演じることはできると思うけど、こんな重荷を彼女に背負わせていいものだろうか。そんなことを考えてしまいました。

竹達彩奈さんは広島が舞台の作品(『たまゆら』)で主役を演じていますし、戦艦大和を演じたこともあります(『艦これ』)。誕生日は6月23日で、実は日米戦争にも縁がある人です(この日が日米戦争でどんな意味を持つか、ある程度の年齢以上の人なら知っている人も少なくないと思います)。竹達さんはすずの雰囲気にも近いし、表現力も申し分ありません。しかし、この子に辛い思いはさせたくない。やはり、演技経験も豊富で、すずの雰囲気に近い折笠富美子さんの方が適しているのではないかと思います。

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