【政治社会】都条例改正の話(つづき)
うちはBSデジタル放送が受信できるので、一昨日はBSフジのニュース番組を見ました。例の「非実在青少年」の話です。その番組には東京都側の代表として猪瀬直樹副知事が出演しており、今回の改正案は単にゾーニングの話であるようなことを述べておりました。
なんだかややこしい話なのでもう一度まとめておきたいと思います。
今回の改正の目的は二つあって、まず一つはインターネットの有害コンテンツに青少年が触れないようにするための施策の推進。そしてもう一つは児童ポルノの拡散防止に関する対策でした。
(ウィキペディア「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の項の外部リンクから改正案の原文を見ることができます)
この案の中で「青少年性的視覚描写物」の蔓延防止のための環境整備が謳われているので、確かにゾーニングの問題ではあります。しかし、それならば現行の条例でも可能なんですよね。
現行条例の第7条が「図書類等の販売等及び興行の自主規制」に関する条文になっていて、施行規則の第15条以下に「指定図書類、指定映画等の基準」が定められています。この規則もかなり恣意的に運用されそうなもので、気に入らないところではあります。が、とりあえずこの規則に従えば、描写される人物が18歳以上であれ18歳未満であれ、猥褻な描写はすべて規制が可能です。
副知事はエロ漫画を2冊並べて、「片方は有害図書指定できたがもう片方はできていない」というように述べていましたが、それはただ単に今ある規則の運用がうまくいっていないだけの話です。「これは子供に見せちゃいかんだろうなあ」と思ったら、有害図書指定をして売り場を分ければいいだけの話です。規則に従わない業者がいるといいますが、現行法でも罰則規定はありますよね。例えば、有害図書を未成年者に販売したら罰金30万円でしたか。その罰則が軽すぎるというならば、まずそこを何とかすればいいのであって、いきなり「非実在青少年」なんていうわけのわからない概念を持ち出すことはないんじゃないでしょうか。
まぁ、有害図書指定そのものが面倒くさくなっちゃったのかもしれないですけどね。それで、「もう18歳未満に見えたら規制でいいんじゃね?」っていうことになったのかもしれない。そういう曖昧な決まりを作られると、あとあと大変なことになってしまう可能性が非常に高いんですけどね。
しかし、「非実在青少年」という考え方が登場してきたのには別の理由もあったと思うんです。「面倒くさかったから」以外の別の理由が。
今回の改正案の目的の一つは「児童ポルノの拡散防止」ですね。案を読むとそう書いてあります。東京都の青少年を性犯罪から守りたいということで、そういう案が出てきてきたわけです。改正案では児童ポルノの定義について、
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年五月二十六日法律第五十二号)第二条第三項に規定する児童ポルノをいう」
と定めています。ここで都条例改正案と児童ポルノ禁止法はリンクしています。
児童を性犯罪から守るためには児童ポルノの需要と供給を断たなければなりませんから、普通の猥褻図書の規制とは別に、子供が出演させられているようなものを特に取り締まる必要がありました。これは子供の権利を守ることでもありますし、納得がいく措置だろうと思います。
ところが、実在の子供が登場する猥褻図書類以外にも漫画・アニメの未成年キャラクターが登場する猥褻図書類が存在していて、その取扱いをどうするかという話になったわけです。規制派としてはこれもまとめて規制したかった。しかし、キャラクターには人格がありませんからそのまま児童ポルノ禁止法の理念を当てはめるわけにはいかないですよね。児童ポルノ禁止法は実際に存在する子供たちを守るための法律なんですから。
そこで「非実在青少年」ですよ。
本来なら現行の条例でも有害図書指定で済む話なんですが、東京都は子供(に見える)キャラクターが登場する猥褻図書をどうしても「児童ポルノ」の範疇に収めたいので、無理やり「非実在青少年」という概念を作ってしまったんですね。
ちょっとまとめてみます。
「実在の子供たちが登場する猥褻図書類」・・・
子供の権利を守る必要があるので、普通のポルノとは分けて考える必要がある。単純にゾーニングという話ではなく、製造そのものを禁止する。
「漫画・アニメの未成年キャラクターが登場する猥褻図書類」・・・
実在しない子供たちなので、権利の侵害も起こらない。普通のゾーニングで十分なはずなので、そもそも条例を改正する必要がない。
「児童ポルノ禁止法」というのは実在する子供たちを守るためにある法律です。そのためには児童ポルノ(実写)の製造禁止というのは方法として正しい。しかし、子供が登場するエロ漫画の方は、それを規制したからといって本当に子供の権利を守ることにつながるのかというとかなり怪しいところがあります。よく倫理がどうとかという話が出てきますが、『北斗の拳』を見たからといって世紀末覇王を目指す奴がいないように、子供をナニする漫画を見たからといって、みんなが実在少年少女に手を出すことはないわけです。もしかすると影響を受けて犯罪に走る人間がいるかもしれませんが、本当にエロ漫画が引き金になっているかどうかはわからないんです。
「非実在青少年」というのは、漫画・アニメの未成年(に見える)キャラクターが登場する猥褻図書類を「児童ポルノ」に含めたいがために無理やり作りだされた考え方です。では、なぜそういう無理をしたかったのか。
この改正案は児童ポルノ禁止法とリンクしていますが、本家の児童ポルノ禁止法も、今回の国会で改正案が審議中です。こちらの方は今のところ漫画・アニメのキャラクターは規制対象外なんですが、ひとつ気になることがあります。というのは、こちらの改正案の附則に漫画・アニメのポルノの規制について調査研究を行うということが明記されているんですね。
その「調査研究」はどのようにして行うかということですが、これはあくまで推測だけれども、各地方自治体の青少年保護条例の運用状況を見るということなのではないかと思うんですね。だからこそ、東京に「非実在青少年ポルノ」の規制条例を先行して導入したかったのではないか。そんな気がするんです。
だとすると、今回の条例改正案が単純にゾーニングの問題であるとは言えないと思います。
「子供(に見える)キャラクターが登場するエロ漫画がある」
↓
「けしからんので児童ポルノ禁止法で規制しよう」
↓
「児童ポルノ禁止法の第2条で、児童とは18歳未満である」
↓
「漫画のキャラクターの年齢が不明だ、規制できない」
(そもそもこの時点でおかしいのだが・・・)
↓
「18歳未満と推定されるものはアウトにしよう(法改正)」
問題は何かというと、「児童ポルノ」ではないものを「児童ポルノ」にしようとしているところにあるんです。児童ポルノ禁止法は実在の青少年を守るための法律です。ですから法第2条に定義されている児童とは実在の青少年を指しているものと見なければなりません。そこに漫画・アニメのキャラクターが含まれると思うのがおかしい。それを無理やり「児童ポルノ」に含めようとしているからおかしなことになるんです。「非実在青少年」なんていうおかしな概念を作らなければ納まらなくなってしまった。論理的に無理があるので、「エロ漫画を見る奴らは認知障害者だ」なんていう非論理的で差別的なレッテル張りまでしなければならなくなったわけです。
もともとの出発点がおかしいから、出てくる法案も抽象的で曖昧になります。この改正案が成立すると、運用が恣意的にならざるを得ませんね。東京都の意図がどのようなものかは知りませんが、いずれコントロールができなくなる危険性は高いです。
| 固定リンク
「政治・社会」カテゴリの記事
- 【日記】shrineとtempleの違いなど(2017.02.19)
- 【普通の日記】とりあえずAmazonは荷物をまとめて送ってください。(2016.12.24)
- 【アニメ】『この世界の片隅に』(2016.11.13)
- 【日常】リカちゃんとんだとばっちり (ノ∀`)(2016.01.17)
- 【日記】『心が叫びたがってるんだ』/日本心理学会(2015.10.04)
