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2008-03-10

【戦争】生まれてくるはずではなかった世界で

日頃、わりと能天気に生きているんだけれども、年に何回かは「自分は何のために生まれてきたんだろう」と思う日というのがあります。今日もそんな日です。

去年の夏に読んだ本で、「人は生まれたついでに生きている」なんていう本を読みました。おいらもどちらかと言うとそういう考え方なんですが、そんなおいらでも自分の宿命について思わざるを得ない出来事があるんです。何年か前の夏にも引越し前のブログに書いたことがありましたが、ある家族が63年前の今日、アメリカ軍の空爆によって亡くなりました。

昭和20年(1945年)3月10日、東京はアメリカ軍戦略爆撃機の大群に襲撃されました。東京大空襲です。亡くなった人の数は正確にはわかりませんが、一説には10万人とも言われています。その空爆の際に、ある母親と、7歳と4歳の息子、それに1歳半の娘が巻き込まれて命を落としました。その家族の父親は、少し前に徴兵されていたために留守でした。以前この記事を書いたときには「彼らの最期を看取ったものは誰もいない」と書きましたが、その後母親から聞き取りをして、ただ一人だけその家族の最期を見た人がいたことを知りました。

正確な時期はよくわからないけれども、恐らく昭和33年か34年の春、ある暖かくてのどかな日の午後に、その中年男性は母の家にやってきました。自身も焼夷弾による火災に飲み込まれたためでしょう、火傷で右腕が曲がったままくっついてしまっていたそうです。彼は、なくなった母親と子供たちの隣人でした。

昭和20年の夏に戦争が終わり、おいらの祖父が地方の配属先から東京へ戻ってみると、東京は焼け野原になっていました。妻も、3人の子供たちも、自分の家族は誰も残っていませんでした。跡形もなく、消えてしまったのです。長い間方々を探してまわりましたが、何の手がかりもありませんでした。家族は本当に死んでしまったのか、ついに納得のいく答えを見つけることができないまま、やがて祖父の捜索は終わりました。

その後、身近な知り合いの勧めもあって、祖父は一人の少女を養女に迎えました。亡くなった娘と同じ年齢の少女でした。その少女を迎え入れる際に条件が付けられていたようで、しばらく後に少女の叔母に当たる女性が祖父の後妻としてやってきました。なんとも不思議な形ではありますが、そんな風にして祖父は新しい家族を手に入れたのでした。

母が中学生だったある春の日に、その火傷の男性はやってきました。その男性は、祖父の元家族の最期を目の前で目撃していたのです。焼夷弾によって延焼し崩れ落ちた家の中から聞こえる母親の助けを求める悲痛な声と子供たちの泣き叫ぶ声を、その人は直に聞いていました。なんとか手を尽くして助けようとしたのですが、自身も重症を負ってしまっていました。どうしても、助けることができなかった。その時の後悔から、その人は戦争が終わった後も、ずっと祖父を探し続けていたのです。祖父が探し続けてついに見つけられなかった家族の手がかりは、こうして意外なところから出てきたのでした。そして不思議なことに、必死で探した手がかりを持っていたその男性は、自宅からそう遠くないところに住んでいたということです。

その男性の出現は、母の人生を少し狂わせました。母は、自分が祖父の本当の子供ではないことを知りました。祖母が、なぜか母に対しては冷淡だったことの理由も、なんとなくわかってしまいました。母は、自分は父親にとって誰かの身代わりに過ぎないのだと思ってしまったようです。

63年前のその日、アメリカ軍の空爆で一人の少女が亡くならなければ、母は東京へ養女に出されることもなく秋田で暮らし続けていたことでしょう。そして、おいらもきっと、この世界には生まれてこなかったはずです。昭和20年3月10日の早朝、その1歳半の少女が激しく炎上する家の下敷きになって焼け死ぬことがなければ。

戦争は、決して遠い昔の話ではありません。自分たちの世代ですら、第2次世界大戦の影響を受けて生きています。だから中国や韓国の人たちがいまだに日本を恨みに思う気持ちも、なんとなくわからなくもないんです。アジアの人たち、特に漢民族・朝鮮民族というのは家族意識が非常に強いですから、少なくとも3代前くらいのことまではごく身近なこととして感じることが出来るのでしょう。むしろ彼らたちから見ると、何でも忘れてしまう日本人の方が冷淡に見えるかもしれません。もちろん戦争に対する謝罪ということになると話は別ですし、彼らに対して必要以上に卑屈になる必要はないと思いますが、彼らが日本との戦争や帝国の支配に対して抱いている感情を少しは頭の隅に置いておいたほうがいいように思います。

話は脇にそれましたが、おいらは毎年この日になると、「自分は何のために生まれてきたのだろう、もしや間違った世界に生まれてきたのではないだろか」なんていうことを、ふと考えてしまうのです。

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